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「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカの「革命家としての本質」

time 2016/04/09  所要時間:約 5

「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカの「革命家としての本質」

ウルグアイ前大統領のホセ・ムヒカ氏が来日し、講演したというニュースが各メディアに流れています。

今日も、多くの学生の前で池上彰さんとの対談し、その模様がテレビで放送されていました。

対談の内容は、ニュースやメディア記事に詳細に書かれていますが、今日はムヒカ氏が学生たち、ひいては日本人に語った内容について、ちゃぼPなりにまとめ、所感を述べたいと思います。

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「世界一貧しい大統領」というセンセーショナルな代名詞は本人の意思ではない

所有する資産はワーゲンの古いビートル1台。中古市場なら20万円にも満たない車一台です。その車も友人に譲ってもらったものだと言います。

生活も質素で、公用車も使わず、質素な自宅暮らし。

報酬は月10万円。その少ない報酬すら、将来学校を作るための貯金に回して暮らしたそうです。

 

故に、世間は、そのちょっと変わった大統領に、

「世界で一番貧しい大統領」

という見出しをつけてそう呼んでいます。

 

でも、彼は言います。

「貧しいというのは物がないということではない。お金や物があればあるほど、もっともっとほしくなる人のことを貧しいと言う」

 

古典落語にこんな言葉が出てきます。

 

「欲深き 人の心と降る雪は 積もるにつれて 道を忘るる」

 

幕末の偉人高橋泥舟の残した言葉です。

ムヒカ氏の言葉を聞いて、瞬間にこの言葉を思い出しました。

「大量生産、大量消費」はこの国が選んだ正当な道だった

一方で、この国は物質社会、いわゆる大量生産大量消費によって発展してきたように見えます。

事実、この国の国民も敗戦後の貧しい状況から、自分たちの力でこれだけの豊かな国を作り上げてきました。

 

思えば、自らが生き延びるために、これほど苦労を重ねてきた国はないんじゃないかと思うほど、この国は惨禍に晒されてきました。

資源も無く、補給を絶たれて戦争をし、挙句に国中を焼き尽くされて戦勝国に奴隷のような扱いを受けながらも必死に耐えて国を復興させ、経済を世界のトップレベルに押し上げて行ったのは、外国から見たら脅威とすら見えるでしょう。

 

それだけではありません。

この国は様々な災害や事故にも見舞われます。

伊勢湾台風に代表される雨風による被害。洞爺丸台風では青函連絡船が転覆し、1,000人以上の犠牲者を出しました。

戦後だけでも、阪神大震災と東日本大震災という巨大地震に遭遇して、たくさんの人が犠牲になり、現在進行形の原発事故まで抱えている。

それでもこの国の底力は、必ず復興してゆく強さです。

決して逃げることはなく、じっと耐えて頑張るのです。

そして日本人は、決してそのことを忘れず、二度とこんなことが起こらないような方法を考えて実行します。

 

確かに、大量生産、大量消費は文明を発展させる代わりに、環境や資源を食い荒らします。

そして「経済成長」という名の下に、日本人の生活を快適にするのと引き換えに、少しずつ自由な時間を奪っていきます。

でも、それは「資本主義社会」の導き出される出るべくして出る結論だと、私は思いますし、それが日本人の選んだ道なのです。

「お金ばかりが幸福ではない」に感じる違和感

ムヒカ氏の話を聞けば、「人間にとってお金ばかりが幸福ではない」と思うでしょう。

でも、私たちは「結局はお金がなければ辛い思いをする」という事を知っています。

なぜこのような事になるのか。

 

物質的に満たされることで得られる幸せが、確かにあるからです。

私だって、MacBookを開いてD5500で写真を撮り、雰囲気の良い喫茶店でブログを書くことに幸せを感じるのですから。

 

ムヒカ氏はこうも言います。

「日本はこれから極端な高齢化社会を迎える。これから社会は孤独に苦しむ老人たちのための社会基盤を作らなければいけない。」

 

今の若い人たちがその言葉を聞いて何ができるのでしょうか。

「ボランティア活動をして、無報酬で働く」

「デモに参加して政府の政策を批判する」

これらは一つの意思表示ではありますが、何かを変えることは多分できないでしょう。

「若者が希望を持てる世の中」とは

私がムヒカ氏の言葉を聞いて一番思ったことは、今の日本は決して絶望ではないけれど、「多くの若者たちが希望を持てる世の中でない」ということ。

物質的に満たされ、夢を持てと言われても、なんとなく流れる時間に身を任せて生活していれば、「何かを変えて幸せになりたいとは思わない」のが普通の人間だからです。

 

危機的な高齢化社会がすぐそこまでやってきていて、医療費や年金が極端に膨張するのに反比例して労働人口が減ってゆくことは、日本人なら誰でも知っています。

労働人口が減るから政府は税金を増やして対処しようとするけれども、肝心の労働者の報酬は増えるどころか減っています。給与が安いままなのに税金が増えていく世の中に、希望があるでしょうか。

でも何もできない。それは政治家すら同じなのです。

 

この国の未来を左右するのは若者です。

その若者が「未来を変えたい」と心の底から思えるような社会にするために、大事なことは、若者に「選挙に行って投票しなさい」と啓蒙活動することではありません。

真面目に働き、仕事をした分の報酬をきちんと本人に還元して、余裕のある暮らしを提供することから、この国の若者の未来が明るくなっていくのだと私は思います。

つまり、「散々儲けてきた年配の経営者が、気力と能力ある若者にしっかりと正当な報酬を与える」ということがあって初めて、将来の高齢者を若者が支えることができる未来が開かれるのではないだろうか。

あとがき。

ムヒカ氏は、若かりし頃は革命家でした。

貧しい家に生まれ貧困の中で育ち、一部の裕福な連中の富の独占に立ち向かって行ったのが彼でした。

4度の逮捕によって、刑務所では10年以上の独房生活と拷問に耐えた末に今があります。

彼はそこで地獄を見て、実体験をもとにした発言が今私たちに語られる彼の結論です。

 

しかし、私たち日本人も多くの地獄を見てきたのです。

戦争、災害、貧困。

日本人もそれらを経験して、努力して出した結論が今の日本です。

 

私は今の若者よりも、今の年配者に未来のことを考えてもらいたい。

数々の地獄を経験してきたこの国に生きる年配者は、どうやって若者に未来を想像させることができるのか。

そう思って止みません。

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